IOHKブログ:Devnet:開発者コミュニティとの架け橋を構築

Devnet:開発者コミュニティとの架け橋を構築

相互運用性のある新プラットフォーム(Devnet)でSolidityやイーサリアムコミュニティその他をサポートし、Cardanoのリーチを拡張

2020年12月18日 Tim Harrison 読了時間6分

Devnets: Building bridges to developer communities

ブロックチェーン環境は静的なものではありません。ブロックチェーンは、コミュニティが成長、学習するにつれ進化しますが、Cardanoも例外ではありません。

各開発段階で、Cardanoの核となる機能性は新たな機能とともに拡大し続けています。Shelleyは、Byronの核となるトランザクション機能に委任機能、ステークプール、分散化を加えました。Goguenは現在、メタデータからスマートコントラクトやネイティブトークンまで、斬新な機能をもたらしています。Voltaireではトレジャリーと投票システムが導入され、その初期段階はすでにProject Catalystと、Cardanoコミュニティのアイデアに対する初の公開ファンディングとして現れています。

11月には、新しい実用性および商業ユースケースを生む最初の重要な要素であるトランザクションメタデータが導入されました。先日は、ネイティブトークンのプリプロダクション環境初回配信を行いました。これに続くのは、トークン作成およびERC-20変換機能です。Cardanoのネイティブなスマートコントラクト言語であるPlutusとMarloweは活発な開発作業が進められており、2021年にリリースを予定しています。これで、斬新なソリューションを生み出し、エキサイティングな新ユースケースを促進するためのプラットフォームが開発者に開かれます。

こうしたGoguenの要素すべてが、真に分散化された自足型プラットフォームというCardanoの最終目的を達成するためにそれぞれの役割を果たします。新たな機会が生み出されることによって、コミュニティエンゲージメントや成長の深化が恒常的に促されます。

私たちには活気とスキルに満ちた、暗号界で最強かつ最も賢いレベルに数えられるコミュニティがついています。そして、公然の非マキシマリスト的かつオープンなアプローチに沿って、他のコミュニティに働きかけ、参加を促したいと思います。

チャールズ・ホスキンソンが最近の動画で概要を述べたように、Cardanoの次の戦略的動きは豊富なDevnet(開発ネット)を追加して、新たな開発者コミュニティを拡張したCardanoエコシステムへと引き込むことです。

これらDevnetは開発者コミュニティ同士をつなぐ「架け橋」となり、新たなアプリケーションをできる限り「実世界」に近い環境でテストすることができるよう、開発環境、仮想マシン、開発者ツールスイートを提供します。

Devnetを理解する

2018年にさかのぼる初期の予備作業を経て、現在Kイーサリアム仮想マシン(KEVM)プログラムが再スタートし、加速しています。新KEVM Devnetは今後1か月ほどかけて構築していく数種のDevnetの第一弾となるものです。EVMは、言語とVMを指定するためのシステムであるKフレームワーク内で稼働し、これらの言語のインタプリターや型チェッカー、等価チェッカー、デバッガーなどのツールを導出します。(EVMはスマートコントラクトをイーサリアムネットワークで実行するものです)

Kは、最高レベルの保証のために形式的推論と数学的厳密性を適用します。Kにより、開発者はプログラミング言語の形式的セマンティクスを、直感的にモジュラー方式で定義、実装することができます。Kは、形式的仕様記述から「VM構築により修正された」実行ファイルも生成しますが、これは実際のプログラムやスマートコントラクトを実行するに十分な速さとパワーを備えています。これは事実上、ソフトウェアはすべての潜在的なインプットに対して要求された関数を実行するのみで他には何もせず、検証可能な証拠を持つものであることを意味します。

長期的なビジョンは、Runtime Verificationにおける提携と絡み、新しいVMを「プラグアンドプレイ」できるK環境を構築することです。Kの目標の詳細は、Cardanoマンスリーショーの動画でRuntime Verificationチームから聞くことができます。

KEVM Devnetは、SolidityやEthereumコミュニティを対象にしていますが、イーサリアムとの完全な後方互換性を可能にします。SolidityはJavaScriptやC++に類似した高水準言語であるため、EVMで直接実行することはできません。Solidityプログラムはまずアセンブリー言語(EVMバイトコード)にコンパイルしてからKEVMで実行することができます。

KEVMにより、開発者はSolidity、コード、またはGlowを使用してアプリケーションを書くことができ、コンパイルおよびDevnetに配信するためのツールキットも提供されています。Devnetでは実世界に近い環境でテストを実施できます。また、Truffleもまもなく統合する予定であり、開発者の使用性がさらに高まります。

Glow

Solidityは、EVMバイトコードにコンパイルする最も人気のある高水準プログラミング言語ですが、それでもこうした言語は他にもあります。Solidityの代替品として有力なのが、私たちのパートナーMuKnが開発したGlowです。

Glowは「高水準」言語であり(高水準言語のその他の例としては、JavaScriptやPythonなど)、非常にセキュアな金融コントラクトを直感的に書くことができるように設計されています。Glowは、一般的な落とし穴やコストを生む恐れのあるバグを避けるために、「correct-by-construction(構築による修正)」の方針をとっています。Glowは、この言語で書かれたコントラクトが特定の望ましいプロパティを持っていることを、コントラクトの他の参加者が何をするにせよ、しないにせよ、証明することができます。

Glowは相互運用性を念頭に置いて設計されています。今後たくさんの多様なプラットフォームやブロックチェーンをターゲットとしたGlowコンパイラーが登場する予定であり、コードの再使用が大幅に簡素化し、実用的になります。

これは次回配信されるDevnetです。ほとんどの中心的な開発作業は現在完了し、最後のQAおよび2021年1月の配信に向けた準備が整っています。

IELE - 第三世代ブロックチェーンの基盤

イーサリウムに馴染みのある多くの経験豊富な開発者にとって、EVMとの完全な互換性は便利で魅力的ですが、KEVMは必然的にEVMの弱点も受け継いでいます。

このため、より進んだセキュアな代替品として、IELE(イエレ)Devnetを提供します。IELE仮想マシンは、こちらも私たちのパートナーRuntime Verificationの開発によるものですが、EVMと類似しながらも安全性の面で勝っています。例えば、これは任意精度整数を用いますが、これで多くのEVMの脆弱性が即座に排除されます。また、IELEはレジスターベースで、EVMのようなスタックベースではないため、開発者はIELEバイトコードをより簡単に直接手描きすることができます。

IELEという語には2つの意味が含まれます。

  • IELE VM
  • IELEアセンブリー言語

IELEは人間が読める、ブロックチェーンの低水準言語です。すなわち、第三世代ブロックチェーンの基盤として使用されるものです。IELEは最新の形式手法を使って設計されており、イーサリアムで懸念される安全性と正確性に対処すると同時に、KEVMがイーサリアムにもたらすスマートコントラクトのコードの数学的正確性を検証することを可能にします。

IELEは、自動的に生成された実装概念である「correct-by-construction」の進化において次のステップを表しています。コンパイラーバックエンド全体の基礎となるために構築され、堅牢なガスの最適化を可能とし、SolidityやPlutusといったIELEをコンパイル対象とする高水準言語で書かれたコントラクトを含みます。

開発者コミュニティの架け橋

KEVM、Glow、IELE Devnetは、Cardanoに効用と有用性をもたらし、成長過程にある開発者エコシステムに寄与する堅牢で持続的なパートナーシップを構築するというGoguenの主要目的と密接にかかわっています。できるだけ多くの分野からできるだけ多くの開発者を惹きつけることを目的に、多様性と包括性を発展させます。

PlutusとMarloweと共に、これらのDevnetが(ブロックチェーン暗号界内外の)開発者に、Cardanoプラットフォームに関わり、説得力のあるユースケースを構築し、エコシステムの成長に貢献するための比類のない機会を提供することを望んでいます。

エキサイティングな未来

私たちは、Cardanoコミュニティだけでなく多彩なコミュニティの密接な連携が必要となる、開発者たちにとって新たな機会へと続く明確な道筋を提供したいと考えています。それは、一度にできることではありません。

現在は、その一つ一つの構成要素をあるべき位置に据えているところです。これが完全に確立された暁には、Devnetは開発者コミュニティとの懸け橋となり、ブロックチェーンだけでなく、開発者エコシステム全体における新たなコミュニケーションや連携への道を拓きます。Cardanoはイーサリアムネットワークとの永続的な後方互換性をもち、イーサリアムチェーンにおけるすべての開発に対応します。開発者ベースの幅を広げることにより、Cardanoコミュニティはスマートコントラクトおよび分散型金融(DeFi)スペースの継続的進化の促進を助けることができます。素晴らしい一年となることでしょう。年明けにお会いしましょう。