2026年7月14日、カルダノ財団は、カルダノ・ガバナンスの効率をどのように向上できるかを検討するため、東京でカルダノ・ガバナンス・ワークショップを開催しました。ご参加のうえ、考えや意見を共有してくださった25名を超えるDRepおよびコミュニティメンバーの皆さまに、心より感謝申し上げます。
ここでは、参加者が共有した内容、投票結果、議論の到達点に加え、意見が分かれた点や、なお納得が得られなかった点も含めて振り返ります。
ワークシート、付箋、2枚のポスターを含むすべての物理的な記録は、写真撮影のうえ文字起こししました。以下の票数は会場で行ったドット投票に基づくもので、厳密な集計値ではなく、おおよその傾向を示すものです。
今回目指したこと
本ワークショップでは、次の一つの提案を検証しました。「カルダノには、ガバナンスについて議論するための共有された中立的かつモデレーションされた場があれば有益であり、具体的なツールはオンチェーンでのDRep投票によって決定する。これは憲法やメインネットを変更することなく、2026年中に実現可能である」というものです。参加者はまず問題の妥当性を確認し、次にそのような場に必要な特性の優先順位を付け、最後に会場の実際の意向を測定しました。
DRepが現在直面している課題
解決策について議論する前に、参加者はDRepとして何に時間と労力を費やしているかを洗い出しました。その結果、6つのテーマが浮かび上がりました。
最も多く挙げられたのは、情報過多とデューデリジェンスにかかる負担でした。情報自体は存在しますが、それを選別し、検証するために過剰な時間を要することが負担となっています。ある付箋には、ガバナンスアクションが存在することを確認するだけでもgov.toolsにアクセスし、その後、なじみのない内容をすべて一から調査しなければならず、時間がかかる、と記されていました。
次に挙げられたのは、提案数の多さによって生じる意思決定疲れです。ある参加者は、これを端的に次のように表現しました。提案と投票が多すぎることで、経済的な現実性に比べ、ガバナンスに不釣り合いなほど大きな比重が置かれています。結局のところ、すべての提案を評価する機会費用は、その実際の、あるいは認識されている有用性をはるかに上回ります。
3つ目は、共有された戦略的方向性がないことです。ある付箋には、戦略的ロードマップがなければ「すべての提案が、同時に等しく妥当でもあり、妥当でなくもある」と記されていました。このテーマは、後述する投票を含め、何度も繰り返し取り上げられました。
4つ目は、**ソーシャルメディア上の議論の質が低いことです。**X上の議論は構造化されておらず、しばしば悪意のある口調になり、理解していないテーマについて非専門家が意見を述べがちだと評されました。これは、中立的でモデレーションされた場を支持する、会場内で最も強い根拠となりました。
5つ目は、会場にいた日本のコミュニティに特有の問題である言語の壁です。ガバナンス情報の多くは英語が先行しており、日本のコミュニティには英語に不慣れな人も少なくありません。また、日本語訳が提供されている場合でも、誤りや不自然な表現が多く、情報を理解しにくいことがあるとの指摘もありました。これは、正面から取り組む価値のある構造的な不利です。
6つ目は、個人が背負う責任の重さです。投票理由を作成するとき、異なる見解を持つDRepやコミュニティメンバーと議論するとき、あるいは一人でリーダーシップを発揮するとき、DRepは孤立し、十分な支援がないと感じています。
コミュニティの議論の場で最も重要な中核的特性
DRepの負担となっている要因について意見を得た後、カルダノ財団が以前のフォーラム投稿で検討していた6つの初期特性を提示しました。
| # | 中核的特性 | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | オンチェーン認証 | オンチェーンデータを用いた参加者認証により、この場へのアクセスをADA保有者、委任代表者(DRep)、ステークプールオペレーター(SPO)、および憲法委員会(CC)メンバーに限定します。 |
| 2 | 独立したモデレーション | 建設的な対話を確保し、可能な限り偏見を排除するために、独立した第三者によるモデレーションを実施します。 |
| 3 | 公開性と記録保存 | 透明性のある議論を促進し、過去のデータを保存し、情報を可能な限り広く共有できるよう、公開チャンネルの閲覧性と記録を維持します。 |
| 4 | 検索性 | 関連する議論や結論が確実に見つかるようにするための検索性。 |
| 5 | オープン標準 | ベンダーロックインを避け、補助ツールの開発を可能にするため、オープン標準と相互運用可能なツールを使用します。 |
| 6 | オープンアクセスと自主ホスティング | この場が将来にわたって包摂的かつ利用可能であり続けることを保証するため、オープンアクセスと自主ホスティングを採用します。 |
参加者は、緑のドット(「最も重要」)と赤のドット(「懸念がある」)を使って各特性の順位付けを行いました。各参加者は緑のドットを最大3つ、赤のドットを1つまで貼ることができましたが、すべてを使い切る必要はありませんでした。票数は概算です。
| 特性 | 緑(最も重要) | 赤(懸念) | 評価 |
|---|---|---|---|
| Discoverability / 検索性 | 10 | 1 | 明確な最有力 |
| On-chain authentication / オンチェーン認証 | 10 | 3 | 支持は強いが、一部に異論 |
| Public visibility & retention / 公開性と記録保存 | 8 | 1 | 強い支持 |
| Open standards / オープン標準 | 4 | 1 | 中程度 |
| Independent moderation / 独立したモデレーション | 4 | 6 | 意見が二分 |
| Open access & self-hosted / オープンアクセスと自主ホスティング | 0 | 5 | 優先度が低い |
参加者の優先事項は明確になりました。参加者が求めているのは、現在および過去の情報を容易に検索でき、永続的な公開記録が保たれ、誰が参加しているかを確認できる場です。これら3つが上位を占め、懸念もほとんど示されませんでした。
一方、2つの特性については意見が分かれました。
- 独立したモデレーションは、一定の支持があったものの、赤票が最も多く、最大の懸念を集めました。これは、中立性や、何をモデレーションの対象とするかを誰が決めるのかについて、実質的な懸念があることを示しています。また、モデレーションをどのように行い、誰が責任を負うべきかについて、さらに議論する必要があることも浮き彫りになりました。
- オープンアクセスと自主ホスティングには「最も重要」の票が一票も入らず、多くの懸念票が集まりました。これは、分散した自主ホスティングの寄せ集めではなく、信頼できる一つの拠点を求める会場の根強い意向と一致しています。
参加者はさらに、付箋で不足している2つの特性を追加しました:使いやすさと、カルダノの長期的目標との整合性です。前者は、円滑なユーザー体験と参入障壁の低さが重要であることを示しています。後者は、カルダノ・エコシステムにおける戦略的方向性の欠如が再び表面化したものです。
グループの現在地(合意状況の確認)
ワークショップの終盤、中核的特性に関する投票の後、参加者は議論の場について現時点でどのような立場にあるかを尋ねられました。各参加者は、「共有された中立的な議論の場を設け、使用するツールはオンチェーンでのDRep投票によって決定すべきである」という文について、5段階の尺度上にドットを1つ置きました。
| 賛同度 | 票数 |
|---|---|
| 5.強く賛同する。構築にも協力したい | 0 |
| 4.賛同する | 1 |
| 3.条件付きで賛同する(条件を付箋に記入) | 2 |
| 2.懸念がある(懸念を付箋に記入) | 6 |
| 1.賛同しない。話し合いたい | 2 |
分布を見ると、支持よりも懸念が上回っていることが分かります。最も多かったのは「懸念がある」であり、「強く賛同する。構築にも協力したい」を選んだ参加者はいませんでした。また、少数ながら明確に反対し、話し合いを求めた参加者もいました。
ワークショップ自体が掲げた前提条件、すなわち、議論の場はDRepから真の支持を得て初めて意味を持つという条件に照らすと、関心は確かにあるものの条件付きであり、無視できない少数がまだ納得していないことが明らかです。本ワークショップは、まさにこのようなシグナルを明らかにするために設計されました。
議論から生まれたアイデア
複数のテーブルからそれぞれ独立して生まれ、最も具体化されたアイデアは、**AIと専門家の支援による提案の事前選別でした。**具体的な案には、次のようなものがありました。
- 複数のAIエージェントが各提案を独立して評価し、すべての評価を通過した提案のみを提示する。
- AIに複数の評価役割を持たせ、すべての評価を通過した後で初めてDRepが注意を向けるようにする(これにより、人間をループに組み込む)。
- 専門家に、一次評価用のスクリーニングの構築を委託する。
参加者は、モデレーションについても議論しました。有償の第三者であるか否かにかかわらず、このようなフィルターの運用を担う者は、その方針と実施の両面において公正かつ独立しているとコミュニティから認められなければならない、という条件が示されました。これは、提案の量を管理可能にするために会場から提示された、最も具体的な条件です。
2つ目の具体的な設計案は、**提案者からの連絡の透明性でした。**提案者がDRepに個別に行うすべての働きかけを、すべてのDRepが閲覧できるようにすることで、ロビー活動と情報の非対称性の問題に直接対処します。
3つ目のまとまりは、軽量で派閥に左右されない規範に関するものでした。付箋には「派閥なし、揉め事なし」「追加ルールなし」、匿名投票の選択肢を求める意見のほか、連合形成のインセンティブやゲーム理論に対する繰り返しの懐疑も記されていました。
公に解決すべき緊張関係
ワークショップで明らかになった2つの緊張関係は、特に取り上げる価値があります。
- **本人確認と匿名性:**この場に参加するためのオンチェーン認証は最優先事項の一つでしたが、匿名投票を求める参加者もいました。参加者の本人確認は求めつつ、投票は本人と紐付けられない形にしたいと考えているようであり、これは現実的な設計上の制約となります。
- **モデレーションと中立性:**会場では、有害なソーシャルメディア上の議論が嫌われており、これはモデレーションを支持する根拠となります。一方で、独立したモデレーションは最大の懸念事項として挙げられ、「追加ルールなし」という要望も示されました。いかなるモデレーションも、権威としてではなく、中立的かつ最小限のものとして受け止められる必要があります。
今後の予定
カルダノ財団は、議論の場の中核的特性と構造について、DRepおよびより広範なカルダノ・コミュニティから引き続き意見を収集します。使用するツール自体の決定は、オンチェーンでのDRep投票に付される予定です。
この取り組みの進展について今後もコミュニティに報告するとともに、異なるタイムゾーンでフォローアップのオンラインセッションを開催し、より広いコミュニティにも議論を開いていく予定です。
