IOHKブログ:Cardanoステーキングにおける一般的見解

IOHKブログ:Cardanoステーキングにおける一般的見解

The general perspective on staking in Cardano

プロジェクトとして、分散化は議論の余地なくCardanoの最も重要かつ基本的な目標です。プロトコルとパラメーターは、すべてのブロックチェーンにとって基盤を提供します。先週、現在予定されているCardanoパラメーターの変更について、そしてそれがどのようにステーキングエコシステムに影響し、分散化という使命を加速させるかについて概要を述べました。

しかし、コミュニティ自身、すなわち、これをどう見て、どう行動し、どのように共通の基準を設けるかがこの成功のペースにおける重要な要素となります。Cardanoは、ブロックチェーンシステムを成功裏に運営するために必要なすべてのプロパティを、「計画的に」提供できるよう、非常に慎重に設計されています。しかしながら、Cardanoは社会的構成物でもあり、その点において、遵守、解釈、社会規範がその回復力と存続性を形成するうえで重要な役割を果たします。

12月6日(日本時間7日)のkパラメーターの調整を控え、ここではステーキングに関するより幅広い見解を、Cardanoで使用されている報酬共有スキームの革新的機能を一部強調しながら紹介したいと思います。

原則と実践的意図

主要な原則の概要とともに、本稿では実践的な意図をはっきりと示しています。これは、ステークホルダーにガイダンスと推奨することを幾分か提供することにより、彼らが有意義にメカニズムにかかわり、プロジェクトのより長期的な戦略的目標を、その行動によりサポートできるようにすることです。

IDベースの参加ではなく、ユーザーの母集団全体に何らかの形で分散しているリソースに基づくコンセンサスは、ビットコインブロックチェーンの開始以来、ブロックチェーンスペースの特徴となっています。ここで、プルーフオブステークシステムは、ブロックチェーン自体に記録されている仮想リソースであるステークを使用する点において異なります。

参加するためにリソースをプールすることは避けられないことです。ある程度のプーリングは通常、経済的な意味で有益であるため、リソース保有者はそれを実現する方法を見つけることになります。この必然性を考えると、システムは、独裁政権や寡頭制の出現をどのように防げばよいのか、という疑問が生じます。

報酬共有スキームの目的

他のブロックチェーンシステムとは異なり、Cardanoは報酬共有スキームを使用し、(1)摩擦を最小限に抑えてステーキングを容易にするだけでなく、(2)リソース所有者が合理的に関与することにより、システム全体の分散化が自然に生じるように、リソースのプールを奨励します。

このメカニズムには、2つの大きな目的があります。

  1. すべてのステークホルダーを関与させる - これは重要です。システムに関与するステークホルダーが増えるほど、分散型台帳の安全性が高まるためです。これはまた、システムへの参加に障壁があってはならず、メカニズムに関与するためにステークホルダー間でオフチェーンでの調整を要求することによって摩擦を生じさせることのないものでなければなりません。
  2. 個々のステークホルダーのレバレッジを低く保つ - リソースのプールにより、一部のステークホルダーのレバレッジが高まります。プールオペレーターは、自分のリソースではなく、プールが管理するリソースに比例してシステムに影響を及ぼします。プールなしでは、すべてのリソース所有者は正確に1のレバレッジを持ちます。これは、たとえば、10万ADAを所有するプールオペレーターが合計2億ADAのステークが委任されたプールを管理するのとは対照的です。このオペレーターのレバレッジは2,000です。システムのレバレッジが高いほど、セキュリティは低下します(これを確認するには、レバレッジが50を超えると、51%の攻撃を開始するために必要なリソースは合計のわずか1%であることを考えてください)。

また、プールサイズが不釣り合いに大きいことが、レバレッジが増加する唯一の理由ではないことも強調しておく必要があります。利害関係者が公然または秘密裏に複数のプールを作成すること(シビル攻撃と呼ばれるもの)も、レバレッジの増加につながる恐れがあります。ブロックチェーンシステムのレバレッジが低ければ低いほど、分散化の程度は高まります。

実践に移す

では、Cardanoで使用している報酬共有スキームはこの目的にどうマッチするのでしょうか。このスキームを介したステーキングにより、2つの点が可能となります。出資と委任です。出資はステークプールオペレーターに適用されます。出資ステークはステークプールに投じられ、プールが稼働し続ける限りそのままにしておくものです。出資は、いわばネットワークへの「コミットメント」であり、プロトコルの安全性をサポートするために、一定量のステークを「ロック」します。一方委任は、オペレーターとして関与することを望まない人々のためのものです。代わりに、彼らは、ステークプール運営者が提供する提供物を評価し、自分の利益とコミュニティ全体の利益に最も役立つと判断する1つ以上のプールに、自分のステークを委任することを勧められています。委任しても資金をロックする必要がないことから、Cardanoにおけるステーキングを控える理由はありません。すべてのステークホルダーは、ステーキングに関与することができ、またこれが奨励されています。

メカニズムの動作の中心となるのは、kとa0の2つのパラメーターです。kパラメーターは、プールの報酬を利用可能な合計の1/kに制限します。a0パラメーターは、単一のプールにより多くのステークを出資するための利点を生み出します。プールにX量の出資を追加すると、その報酬が最大a0 * Xまで追加的に増加します。これは他のプールを損なうものではありません。出資が不十分なために請求されないままになっている報酬は、Cardanoのリザーブに戻され、将来割り当てられるからです。

ステークプールを作成する際、オペレーターは出資額を決定するだけでなく、マージンと運用コストを明示する必要があります。各エポックの終わりにプールの報酬が割り当てられると、まず運用コストを源泉徴収し、ステークプールの存続を保証します。続いて、オペレーターの利益が計算された後、すべてのプール委任者に、そのステーク量に比例したADA報酬が支払われます。

このメカニズムは、委任によって実行されるステークプールの評価と組み合わせて、可能最大額の出資をしている同サイズのk個のプールという構成にシステムが収束するよう、一連の適切な制限を設定します。平衡点には、委任者の報酬が均等化されるという特性があります(したがって、どのプールに委任するかは関係なくなります)が、ステークプールのオペレーターは、パフォーマンス、コスト効率、およびエコシステムへの全体的な貢献に対して適切に報酬を受け取ります。

上記を実現するためには、有意義かつ合理的な方法でメカニズムに関与する必要があります。ステークホルダーがメカニズムを理解するのを助けるために、ここでいくつかの推奨されるポイントを紹介します。

委任者への勧め

  1. プールを知る - 利用可能なプールのデータおよび情報を調べます。これには、オペレーターのウェブプレゼンス、プール運営に関してどのようなタイプの情報が提供されているか、コストについて説明しているか、地域や運営に関するその他の側面に合理的に基づいたコストであるか、ADAの変動に応じてコストが定期的に更新されているか、個人的な時間のコストも含まれているかなどです。プールの高い稼働性を維持するには、コミットメントと努力を要することを忘れないでください。こうした努力をしているオペレーターは報酬に値します。

  2. 大きな視野をもつ - 1つの側面に基づき選択するのではなく、全体を見て選択しましょう。自分の選択がネットワークに長期的にもたらす価値を考慮し、自分の委任が「信認の一票」となる、あるいは、プールの使命や目的への支持を示すものとなると考えてください。プロフェッショナリズム、そしてシステムの目的に長期的なコミットメントを表明しているプールを選んでください。コミュニティでの存在感や物事を構築する際に行った支援により、エコシステムの基盤形成を支援してきたコミュニティメンバーを見極めてください。エコシステムの長期的繁栄は、あなたの委任先の選択から重大な影響を受けます。ネットワークの分散化が進めば進むほど、ネットワークの回復性と存続性は増すのです。

  3. 「プールスプリッター」に注意する - 少額の出資で複数のプールを運営するプールオペレーターは、委任者や小規模オペレーターの害となります。委任者の害となるのは、出資を1つのプールに集中させることで、より多くの報酬を提供でき得るためです。そうしないことで、請求されないままとなる報酬があるのです。小規模オペレーターや新規参加したオペレーターにとっては、委任を受けられないままとなり、運営が滞ります。委任されないと、プールは閉鎖を余儀なくされる場合もあるのです。したがって、飽和レベルを下回る出資で複数のプールを実行しているプールオペレーターは避けてください。大規模なステークホルダーには、委任者を受け入れてパブリックプールを運営する正当な理由があります(たとえば、ステークの一部を他のプールに委任して、コミュニティをサポートしています)。そのようなオペレーターが委任戦略とレバレッジについて行う公式声明を参照してください。こうしたプールは、レバレッジを低く抑え、コミュニティをサポートしていると推測できるため、委任しても大丈夫です。

  4. レバレッジの高いオペレーターに注意する - ステークプールオペレーターのレバレッジ(レバレッジの計算方法は後述)に気を配ってください。同じサイズのプールを比較する場合、出資額が高いほどレバレッジが低くなります。高いレバレッジは、自己資金をほとんど投資していないステークプールオペレーターを示しています。ステークプールオペレーターは、もちろん、ステークを出資する以外の方法で投資していることを証明する場合もあります。たとえば、専門性が高く、様々な方法でコミュニティに貢献できる場合もあるでしょう。したがって、以下に注意してください。高いレバレッジ自体は、特定のプールへの委任を回避する理由にはなりませんが、慎重に進め、運営者を慎重に評価する必要があることを強く示しています。

  5. 比較する - プールのランキングやパフォーマンスといった、ウォレットソフトウェア(または、adapoolspooltoolなどの認識されているコミュニティリソース)から提供される情報を考慮に入れてください。ただし、ランキングは重要ですが、委任先として選択する際の唯一のファクターとするべきではないことは覚えておいてください。包括的に考えましょう - たとえ最高レベルのリターンを提供しなくても、自分が同意できる使命をプールが満たしていることや、ポッドキャストや社会的アクティビティを通じてより広いコミュニティに価値を付加しようとしているといったことを考慮したいと思う場合もあるでしょう。

  6. 関与する - パフォーマンスデータが表示されていないプールが、魅力的な特性を持つ場合もあります。最良のシナリオではより良い報酬を提供する可能性がありますが、実はパフォーマンスが最適ではなかったと判明する場合もあるため、委任先の選択肢としてのリスクも高くなります。「リスクプロファイル」と、自分がどの程度頻繁にステーク委任を再設定をする意思があるかに応じて委任しましょう。プールのパフォーマンスと更新情報をチェックして、自分の選択と評価が可能な限り最高のものであることを定期的に確認してください。

プールオペレーターへの勧め

  1. 透明性を保つ - プールの運営コストをできるだけ正確に設定します。自分やパートナーがプール運営につぎ込んだ個人的な労力に対するコストも含みましょう(妥当なレートで)。ステークプールオペレーターはCardanoを支える柱です。したがって、コミュニティから報酬を受ける権利があります。コストに関しては正直に、自分のプールのウェブサイトに含めましょう。潜在的委任者に対しプールのコストがどこで利用されるのかを説明します。プールを維持するために投資した時間に対し課金することは重要であることを、常に忘れないでください。短期的には、時間とエネルギーを「無料」で(またはホスティングコストの後で、実質的な損失で)投資する覚悟ができているかもしれませんが、それでは中長期的にネットワークの持続可能なモデルとはならないことを忘れないでください。
  2. プールを分割しない - 今後予定されているkの変更(日本時間12月7日のk=500への移行から開始される)に伴い、プールオペレーターは委任者を維持するために、すでに飽和状態になっていないプールを分割しています。自分のステークで完全に飽和させられない限り、プールを分割しようとは思わないでください。プールが巨大な(相対ステークが1/kより大きい)場合は複数のプールを作成できますが、レバレッジはできる限り1以下に抑えてください。自分のレバレッジを高めるようなプール分割は委任者の報酬を阻害しますし、より重要なことに、Cardanoエコシステムの分散化を阻害し、全員に有害となります。異なるティッカーを使用して複数のプールを実行、管理している場合、これについて公の声明を出しましょう。自分のレバレッジをコントロールするステップを説明してください。複数のプールをコントロールする事実を隠しながらこれを作成することは、Cardanoに対するシビル攻撃と変わりません。この行動は、コミュニティにより非難されるべきものです。レバレッジは以下の公式を使用して計算し、公開できます。

取引所は、集合的に他人のステークを管理することから、特殊な大規模ステークホルダーとなります。取引所の戦略の1つは、レバレッジを完全に避け、自分が管理するステークをコミュニティプールに委任することです。取引所がプールオペレーターになる場合、出資および委任戦略を組み合わせることにより、レバレッジを1より低く維持することができます。

  1. マージンを賢く設定する - プールの競争力が増すようなマージンを選択します。忘れないで欲しいのですが、全員が自分のステークを合理的に委任した場合、Daedalusウォレットが提供するランキングで(k+1)番目のプールを破るだけでよいのです。プールが委任を惹きつけられるような他の利点を提供する場合(たとえば、他の人がサポートしたいと思う慈善活動に貢献しているなど)、または顕著な稼働時間やパフォーマンスが保証できるような優れた設備を導入した場合などは、これを広く宣伝するようにしましょう。こうした利点を提供するときは、マージンを高く設定することを考慮すべきです。

  2. プールデータを最新に保つ - ADA価格の変動に応じて、コストおよびマージンを定期的に更新しましょう。委任者に安心感と、ステークプール運営の更新情報を提供します。事故やダウンタイムが発生した場合は、ウェブサイトや他の通信チャネルを介して正直に委任者に通知してください。

  3. 可能な限り出資する - 出資額は無理のない程度で、できる限り増やしてください。自分のステークを使用するのに加え、他のステークホルダーと提携して自分のプールの出資を増やすこともできます。高い出資額は、長期的なコミットメントとレバレッジの低下を示唆し、報酬共有スキームの計算におけるa0条件により定められた通り、エポックごとに追加的な報酬のロックを解除します。結果として、プールは委任候補者たちにとってより望ましいものとなります。ただし、出資だけがプールを魅力的にするわけではないことも覚えておいてください。ウェブやソーシャルメディアで時間を費やし、Cardanoエコシステムに貢献している方法を漏れなく宣伝しましょう。

Cardanoステークホルダーの皆さんにとって、上記のアドバイスが、ステーキングに取り組むうえで有益で役に立つものであることを願っています。他の多くの点と同様に、Cardanoはブロックチェーンデザインに徹底的に研究した斬新なメカニズムを導入しています。報酬スキームは、本稿の冒頭に述べた一連の目的を満たす均衡を提供することが数学的に証明されています。ただし最終的に数学は十分ではありません。これを実現できるのは人々だけです。

Cardanoの未来はコミュニティの手に握られています。

本稿で表明された見解は教育飲みを目的としたものであり、いかなる金融的アドバイスを提供することも意図していません。

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