IOHKブログ:出資システムがCardanoを健全に保つ仕組み

分散型ブロックチェーンへの攻撃回避は利点の1つに過ぎない

2020年5月12日 Lars Brünjes 読了時間5分

CardanoメインネットがShelleyへ近づくにつれ、必然的に分散化が議論の主題となっています。設立当初の思惑の如何にかからわず、ビットコインやイーサリアムといったプルーフオブワーク暗号通貨は時間の経過とともに中央集権的色合いを強めています。初期のビットコイン愛好者が週末にブロックのマイニングを行っていた時代はすでに過去となり、今日では少数の専門のプロ集団が各チェーンのマイニングを牛耳っているのが見受けられます。

それ自身は必ずしも悪いことではないとはいえ、もしこの状況がCardanoに生じたとしたら、分散型プルーフオブステークプロトコルのビジョンとは相反するものとなります。

Cardanoは、分散型であることを核として、特にステーク委任と報酬メカニズムにこれを反映させながら、ゼロからデザインされています。Cardanoネットワークにおいて、一定規模を超えるプールは優位性を持たず、多くの中規模プールが存在する状態で全員の委任報酬が最適化されます。すべてのエコシステムは多様性から利を得ます。同様に私たちは、コミュニティ内のスキルを持つメンバーの草の根的活動を促進することから、商業目的によるステークプールビジネスの確立を目指す人々をサポートすることまで、このアプローチにより最適なバランスを保つことができると確信しています。

出資とその仕組み

プールを登録する際に、プールオペレーターはプールの魅力を高めるために個人的なステークを出資することを選択できます。出資額はエポックごとに変更でき、プールの閉鎖に伴い返還されます。

Cardanoブロックチェーンではだれもがプールを運営できます。最低出資額は設定されていません。プールオペレーターはオプションとして自分のステーク(または友人やパートナーのステーク)の一部または全部をプールに出資し、プールの魅力を高めることができます。ADA出資額が高ければ高いほど、プールが受け取る報酬額も増えるため、委任先としての魅力が増します。

また、最大出資額が設けられていないことも重要です。ステークできるADAを大量に保有するプールオペレーターは、自分のプールを出資で飽和状態にして委任を受けないことにより、自身の獲得する報酬を最大化できます。これはもちろんごく限られたオペレーターにのみ可能となるケースでしょう。ほとんどのオペレーターは出資、低コスト、低マージン、そして優良なパフォーマンスにより委任を得ようと努力します。

委任する側にとってプールがどれほど魅力的であるかは、以下の4つの要素に応じます。

  • 運営コスト(低い方が望ましい)
  • オペレーターマージン(低い方が望ましい)
  • パフォーマンス(高い方が望ましい)
  • 出資レベル(高い方が望ましい)

出資額を増やすことにより、プールオペレーターは委任先としての魅力を保ったまま、オペレーターマージンを高めに設定することができます。

出資が必要な理由

出資は、Cardanoブロックチェーンに健全な商業的エコシステムを促進するメカニズムを提供します。出資メカニズムはまた、システムをシビル攻撃から守るために必要です。以前述べたように、シビル攻撃においては、個人的ステークをほとんど持たない人物が数多くの低マージンプールを作成し、そこにステークの過半数を惹きつけようとします。これが成功すると、こうしたプールはコンセンサスをコントロールし、二重支払い攻撃を仕掛け、フォークを作成し、ブロックを検閲して、システムを損傷、果ては破壊することができるようになります。

高額の出資でプールの魅力を高めることにより、このような攻撃を防ぐことができます。なぜなら、攻撃者は自分のステークを多くのプールに分割しなければならず、プールの魅力は下がり、シビル攻撃を仕掛けるためのコストが増すためです。

出資の影響力

ここで私たちは典型的な矛盾に直面します。システムをできるだけ分散化し、できるだけ多くの人々にステークプール運営の機会を提供するためには、出資が報酬に大きな影響を及ぼすべきではありません。

一方、シビル攻撃からシステムを守る必要を考えれば、出資の影響力が高まるほど、攻撃者が攻撃を成功させるためにより多くのADAが必要となります。

目標は明確です。出資の影響を最小限に抑えながら、安全性を保障できるようにすることです。

出資の影響力の決定方法

出資の影響力を決定するパラメーターは、ShelleyをCardanoメインネットに公開する前に設定する必要があります。ただし、パラメーターには柔軟性を持たせ、時間の経過とともに調整できるようデザインする必要があります。Shelley Haskellテストネットは、このパラメーターを調整し、どの値が機能し、どの値が機能しないのかをテストする、最適な機会を提供します。また私たちは、プールオペレーターたちが異なる出資額をモデル化し、委任、ひいては報酬および収益への影響を分析できるような計算機の開発を進めています。

合理的な値は多くのファクターに左右されます。プールオペレーターの典型的なステーク所有量、ノード運営にかかる費用、プール運営に関心を持つ人々の数などです。私たちはインセンティブ付きテストネットを通じて多くのデータを集めましたが、次のテストネットではユーザーと密に協力しながら、さらに多くのデータを得ていきます。

私たちは科学的なアプローチに信念を持っており、私たちのデザインが分散型の安定した安全なシステムへと至ることに自信を持っています。ただし科学と数学ができることはここまでです。仮定をモデル化することは常に必要であり、どんなモデルも実世界ほど複雑で多様ではありません。そしてCardanoコミュニティを形成しているのは実際の人々です。

すでに、Redditや最近のCardano Effectのショーなどで、この件に関しとても有益な貢献と議論が行われています。Shelley Haskellテストネットは、すべての人々にとって何が最適であるかを見極めるためにステークプールオペレーターたちと協力しながら、議論を重ね、査定をし、イリテーションを行う格好のトレーニング場です。ちょうどインセンティブ付きテストネットや最近公開されたDaedalus Flightユーザーテストの成功を目にしたところですが、またも私たちの研究を実践に移すためにコミュニティのサポートに頼るべき時が来ています。

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