IOHKブログ:Cardanoのネイティブトークン: 中核をなす原則と相違点

前回の投稿では、Cardanoにおけるトークンの目的と価値について解説しました。ここでは、アプローチを導く4つの原則と、主要な利点について掘り下げます。

2020年12月9日Polina Vinogradova 読了時間5分

Native tokens on Cardano; core principles and points of difference

イーサリアムでは、ユーザー定義のカスタムトークンはカスタム資産の移動をシミュレートするスマートコントラクトを使用して実装されます。Cardanoにおけるアプローチは、台帳自体がADA外のネイティブ資産の会計処理をサポートするため、スマートコントラクトを必要としません。

もう一つの違いは、Cardanoのマルチ資産台帳が、代替可能トークンと一意の代替不可能トークンの両方を、(ERC-20やERC-721トークンが必要とするものに類似した)専用のコントラクトなしでサポートしていることです。単一のアウトプットに代替可能、不可能なトークンの両方を合わせて格納することができます。

Cardanoネイティブトークンのフレームワークは4つの原則に基づいています。

  • 軽量
  • 手頃な価格
  • セキュリティ
  • 統一プロセス

軽量

ネイティブトークンのフレームワークは、トークンバンドル(値)を中心に構築されたマルチ資産台帳構造に基づき、単一のトークンバンドルはADAやその他の異種トークンを混合して含むことができます。これらのトークン包有構造は、以前同様、ADAではなく台帳のアウトプットに格納されます。各種トークンは、鋳造ポリシーへのハッシュ参照を含む資産IDで識別されます。鋳造ポリシー自体は鋳造またはバーン中に確認されるのみで台帳に格納されることはないため、このアプローチにより軽量化がもたらされます。

代替可能性の関係も、軽量性を損なわずに資産IDでキャプチャーされます。同じ資産IDは互いに代替可能ですが、異なる資産ID間では不可能です。一意のトークンの資産IDに関連付けられた数量は正確に1つです。

資産IDは各トークンタイプを1つのトークンバンドル内および台帳全体で識別します。また、トークンバンドル内部の2段階マップ構造でトークンの場所を特定します。この内部データ構造により、代替可能、不可能トークンを一様に表すことができます。また、システムでトークン化できる資産のユースケースの種類にも大きな柔軟性をもたらします。たとえば、単一のプロパティのタイムシェア、または芸術家が単一の鋳造ポリシーで対象とした、ユニークな芸術品のセレクションを表すのは簡単です。

イーサリアムのERC-20で、アセットが2つの契約間でやり取りされる方法を見ると、ネイティブトークン固有の単純さがさらに際立ちます。この状況では、スマートコントラクトのコードが必要となり、複雑性やエラーの余地、そしてコストが増すのです。トークンバンドルの構造は、異なるタイプのトークンが単一のトランザクションで素早くやり取りできるため、資産の移動にかなりの軽量性をもたらします。

手頃な価格

ERC-20トークンの環境では、2ピア間でトークンを移動する場合、その数に拘わらずスマートコントラクトを実行する必要があり、実行手数料(ガス)が発生します。対照的に、Cardanoのネイティブマルチ資産エコシステムでは、資産(トークン、ADA、カスタム通貨など)の移動にスマートコントラクトを必要とせず、実行手数料は発生しないため、手頃な価格感が増します。

セキュリティ

ネイティブトークンはイーサリアムのERC-20やERC-721標準よりも軽量かつコストを抑えた設計が特徴です。しかし、この2つの特徴は、システムの完全性を保証する堅固なセキュリティ層なしには意味を成しません。

ネイティブトークンでは、システム保全は台帳プロパティの価値保存(すなわち、全インプットの総数がアウトプット総数と同じとなること)を中心に構築されています。すべてのネイティブトークン移動ロジックは、ユーザー定義のスマートコントラクトでなく、台帳でコード化されています。これにより、システムの動きが確実に予想可能かつ統一され、脆弱性につながりやすいユーザーによるスマートコントラクトの理解は不要です。

会計の正確性が台帳により保証される一方、トークンの鋳造およびバーンはユーザー定義の鋳造ポリシーにより規定されます。鋳造ポリシーは、その対象となるトークンに永久にハッシュで関連付けされており、このポリシーを変更する方法はありません。これにより、発行者が選択するポリシーを、元のポリシーで許可されていないトークンタイプの鋳造やバーンを可能にするよう変更することは絶対に不可能となります。鋳造トランザクションが台帳に追加されるたびに、鋳造される各トークンタイプのポリシーは確認され、これを満たしている必要があります。流通している各トークンは、ADAを除いて(Cardanoが追加的ADAの鋳造を禁止しているため)、鋳造ポリシーを必要とし、そのポリシーに従って鋳造されることが保証されます。

したがって、Cardanoでトークンを操作するために唯一必要なカスタムコードはポリシー自体です。ポリシーハッシュを資産の識別子として紐付けるということは、グローバルな資産登録の必要がなく、資産の作成が安価かつ簡単であることを意味しています。システムはシンプルで軽量、そして使いやすいままです。

統一プロセス

Goguenの一部としてネイティブトークンが実装されると、台帳はすべてのトークンを同じ方法で処理します。そして曖昧さおよびミスやバグの可能性を減らすために、トークンの鋳造は単一の方法でのみ行うことができます。この統一プロセスを使用した簡易化により、開発が迅速化し、開発経験が全体的に向上します。

プレプロダクション環境

ネイティブトークン機能は、2021年第1四半期のプロトコルアップグレード(社内での通称はMary)に続いてCardanoメインネットにデプロイされ、ユースケースと機会の新たな世界を開きます。この日に先立ち新開発者たちを迎えるために、現在ネイティブトークンのプレプロダクション環境のデプロイを仕上げています。したがって、ソーシャルチャネルでデプロイの最新ニュースをチェックしてください。

初期参加を望む開発者のために、Cardano開発者サイト(英語のみ)に専用エリアを創設しています。参考資料もあわせてご覧ください。ここには漸次追加されます。このページの開発者アンケートに登録し、関心を表明するとともに、配信情報をいち早く入手してください。

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