AGIなどのイーサリアムトークンをCardanoプルーフオブステークブロックチェーンで実行できるようにする新ERC20コンバーターがまもなくテストネットに登場
2021年5月17日 Francisco Landino 読了時間7分
アプリケーションでブロックチェーンプロトコルを繋ぎ、協力することは、従来の金融システムに代わる分散型金融（DeFi）を達成するために欠かせません。
追跡サイトのDeFi Pulseによれば、現在750億ドル相当の暗号通貨がDeFiにロックされています。1年前の合計額は7億ドルでした。この値のほとんどは、ERC20トークン標準に基づいた暗号資産形式です。
しかし、イーサリアムのプルーフオブワークインフラストラクチャーは上昇し続けるコストが課題となっています。この問題を予見した私たちが代わりに提供するものは、Cardano設立時に設定された原則の1つです。これがまもなく結実します。
アプリケーション開発者および事業者に向けたさまざまなユースケースを拡張するために、CardanoはERC20トークンをプラットフォームに移行するサポートを行います。Alonzo（アロンゾ）ハードフォークとPlutusスマートコントラクトはまもなく到来します。これによりユーザーは、過密したイーサリアムネットワークに比べてトランザクション処理容量が高く手数料が低いCardanoにサポート対象のイーサリアムトークンを移し、セキュリティ強化、コスト削減、相互運用性を享受することができるようになります。
ERC20を選ぶ理由
ERC20標準がビジネスニーズという点における市場の傾向を満たす理由を理解するために、ERC20の特色を詳しく見てみましょう。もちろん、2015年にブロックチェーンにスマートコントラクトの概念と「プログラム可能なお金」を最初にもたらしたのはイーサリアムです。以来、トークン化とERC20トークンは、日々の商取引への実用性により人気を得てきました。ブロックチェーンに構築されたアプリケーションは、以下に使用可能なトークンを提供できます。
- 支払いユニット
- トランザクションユニット
- デジタルサービスへのアクセス
- 報酬またはインセンティブ
- 投票権
- 投資メカニズム
優れた設計のERC20は多くのニーズに対応し、役に立てばたつほど需要も増え、それに従い価値も高まります。これが、これらのトークンが幅広く使用され、ウォレットや取引所にしっかりとサポートされている理由です。
イーサリアム対Cardano
ERC20標準はイーサリアムのために発明され、現時点でこのトークン標準に基づくコントラクトは40万を超えています。この中にはバイナンスコイン（BNB）、Tether（USDT）、Uniswap（UNI）、Dai（DAI）などが含まれます。
イーサリアムは人気があり機能的なブロックチェーンプラットフォームですが、スローダウン気味でより高額になってきています。分散型アプリケーションでやり取りするネットワーク参加者が増えるほど、トランザクションの検証用に支払われる「ガス」代は急激に上昇します（図1）。
図1：上昇するイーサリアムガス費用
イーサリアムユーザーが経験した問題は、「DeFi Adoption 2020」に引用されたCointelegraphのアンケートでも示されています。
「イーサリアムに構築されたプラットフォームの45%が、大規模なDeFi適用を妨げる上位3つの問題の中で、スケーラビリティとガスコストの上昇の問題に言及しています」
イーサリアムはこれらの課題をいまだ解決しておらず、短期的に解決できるとも思えません。したがって、多くのビジネスは他のオプションを検討したいと考えています。
私たちは、ERC20トークンをCardanoへ移行できるようにすることで、Cardanoのイーサリアムに対する優位性を活用した価値提案を提供することに焦点を当てています。特に、イーサリウムの高コストと渋滞しがちなトラフィックに比べて、Cardanoのより大きなトランザクション処理容量と低コストに重点を置いています。
Ouroborosの役割
ネットワークの過密と高コストの問題に対応するカギとなるのは、CardanoのOuroborosプルーフオブステークコンセンサスメカニズムです。イーサリアムのプルーフオブワークプロトコルと比較して、Ouroborosがネットワークトランザクションを処理するために必要とする電力ははるかに少なく、その違いは小国に対する家1軒分に匹敵します。このため、Ouroborosは環境に優しいだけでなく、トランザクション処理に必要な手数料もはるかに低くなります。
さらにCardanoでは、台帳がネイティブトークン機能をビルトイン会計モデルでサポートしているため、スマートコントラクトの実行手数料がかかりません。これは、異なるタイプの資産の追跡、移転、所有が、スマートコントラクトの代わりに台帳で処理されることを意味します。イーサリアム上でERC20トークンを作成、転送するためには、標準コントラクトタイプを手動で変更する必要があるのに対し、このロジックはCardanoに組み込まれ、エラーや脆弱性のリスクを排除します。
ERC20コンバーターの仕組み
Cardanoは現在ADAとネイティブトークンをサポートしており、16万を超えるネイティブトークンがミント（作成）されていることにその成功が証明されています。この度のERC20コンバーターの始動により、将来の相互運用性の向上が確実になるだけでなく、ビジネスチャンス拡大に向けた堅固な基盤が築かれることにもなります。
ERC20コンバーターは、発行組織やそのユーザーがERC20トークンのCardanoへの移行を処理するために使用できるツールです。トークンの発行者（Cardanoへのトークンの移行を望む組織）、次にそのツールを使って自分のERC20をCardanoネットワークに動かすユーザー（トークン保有者）のために設計されています。
ユーザーは自分のイーサリアムトークンをわずか数クリックで変換でき、移動させる際には、これらのトークンはERC20とまったく同じ価値と働きを持つCardanoの特別なネイティブトークンへと「翻訳」されます。さらに、ユーザーが後になって望む場合には、そのトークンをCardano上でバーン（廃棄）することによって元のネットワークに戻すこともでき、双方向変換が可能です。
まもなく、ERC20コンバーターの1つのバージョンが専用のテストネットで展開されます。IO Globalはパートナーと協力してCardanoへの移行に取り組んでいます。SingularityNETは、その最初の例です。ERC20コンバーターは新しいSingularityNET AGIXトークンを導入します。このデプロイは、SingularityNETのCardano移行計画の最初のマイルストンとなります。初期テストネットでは、ユーザーはCardanoとEthereum Kovanの両テストネットでAGIXトークンを操作しながら、移行プロセスを査定できます。
MetaMask（Chrome拡張機能）を使用してアカウント認証することも可能になる他、多くのオプションが追加されます。ユーザーは、Cardanoに自分のトークンを移行して残高およびトランザクションを簡単に追跡するために、Daedalusテストネットアドレスを追加する必要があります。
ユーザーがERC20コンバーターアカウントにログインすると、SingularityNETトークンがリストに表示され、移行させることができるほか、トークンをクリックすると、トークン残高などの詳細を表示することができます。トークンを選択し、変換する額を指定し、Cardanoのアドレスを特定して移行します。トークンをアドレスに移動させると、Daedalusウォレットで支払いやトランザクションに使用できるようになります。すべてのアクティビティは、EtherscanおよびCardanoエクスプローラーで見ることができます。
図2：ERC20コンバーターダッシュボード
後の段階では、異なるタイプのトークンがダッシュボードに表示されるようになります。移行可能なトークンが最初に表示され、まだ可能になっていない物は、変更に関する更新情報を受け取ることも可能です。
今後の展望
ERC20コンバーターの提携先が増えれば、サポートされるトークンタイプの幅も広がります。現在、パートナーはトークンの管理者である必要がありますが、Plutusスマートコントラクトがメインネットで稼働する際には、組織をオンボーディングする間に相互運用性が向上します。
私たちの目標は、多くのトークンをサポートして、商取引の可能性を創り出すことです。したがって長期的展望としては、多彩なトークンにより、ERC20コンバーターがブロックチェーン間の架け橋となり、その効果的なコミュニケーションを促進します。
ERC20コンバーターテストネットは、現在公開に向けてQAテストの最終段階に入っています。このステージにより、ユーザー経験をテストし、発生した不具合を修正しながら操作性を向上させることができます。まもなく専用テストネット環境と関連ドキュメンテーションおよびユーザーがコンバーターの機能をテストする方法を案内するガイドを提供します。
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