Cardano台帳はトークン化資産をネイティブとして処理 - カスタムコードは不要
2回にわたりお届けするネイティブトークンの第1回目では、Cardanoのトークン化アプローチを、ネイティブトークン、ネイティブ資産が必要な理由、ERC-20およびERC-721トークンに対するその利点を通じて解説します
2020年12月8日 Tim Harrison 読了時間5分
すべてはetherで始まりました。イーサリアムは2015年7月に登場しました。ビットコインはその時点で登場から6年。しかし、暗号界全体は未だニッチな世界でした。
ビットコインは純粋にデジタル通貨として設計され、現在もそのままの状態です。イーサリアムが登場したとき、これには確固とした奥の手がありました。最初からスマートコントラクトを搭載していたのです。これは、サードパーティ開発者が独自のアプリケーションを構築し、それをイーサリアムブロックチェーン上で分散的に実行できることを意味しました。イーサリアムは市場性および多用途性においてビットコインを凌駕したのです。
スマートコントラクトは、イーサリアムブロックチェーンにユーザー定義のトークンを作成することを可能にしました。代替可能なイーサリアムトークンはERC-20標準で開発でき、一意の代替不可能なトークンはERC-721のフレームワークで作成できました。しかし、ユーザー定義のイーサリアムトークンは(代替可能、不可能を問わず)、固有の非効率性を備えていました。イーサリアムチェーンがネイティブトークンをサポートしていなかったため、カスタムコードの作成および実装を必要としたのです。
トークン化概説
ここで、トークンの目的と価値について確認しましょう。トークン化とは、機密データ要素を非機密データ要素に置き換えるプロセスと定義されます。この非機密データ要素がいわゆるトークンで、外的または悪用可能な意味や価値はありません。端的に言えば、トークン化は物事をデジタル資産に変換するプロセスです。
このアプローチには明確な利点があります。トランザクションコストの削減、透明性、流動性の向上、分散化、効率の向上が例として挙げられます。トークン化それ自身は極めて多用途性のある機能で、多くの商業的目的を達成する道を拓きます。この実用性は、トークンがプログラム可能であり、したがって一意とすることが可能であるという事実からきています。
例えば、トークンの保有者が限定コンテンツやカスタム商品にアクセスできるように、あるいは投票に参加できるようにプログラムすることができます。投票プロセスの実際の目的は関係ありません。最終的に、投票権をトークン化することにより、参加者は自分自身より大きなものに参加しており、そこで自分の見解を表明することができるという感覚を得ることができます。
トークン化は金融商品や経済モデルの作成に使用することもできます。その例は、収集品やオルタナティブ投資、ギフトカード、スポーツくじ、ゲーム内資産、商品など、多岐にわたる分野で想定することができます。これは実世界の商品やサービス、アクティビティを、デジタル世界とつなげる可能性を秘めています。
物事をデジタル資産に変換するCardanoの方法
Goguenはトークン化をネイティブとして処理するメカニズムを導入します。ここでは、ロジックはスマートコントラクトではなく、Cardano台帳を基にしています。このアプローチをとることにより、イーサリアムブロックチェーンでサポートされているERC-20やERC-721標準よりも優れた、効率的なトークン化戦略を実現することができます。
イーサリアムチェーンにおけるユーザー定義のトークンは(代替可能なERC-20トークンおよび代替不可能なERC-721トークン共に)ネイティブではなく、ベースとなる台帳は直接これらのトークンをサポートしていません。これはERC-20やERC-721標準で作成されたトークンがイーサリアムのネイティブな暗号通貨であるetherと根本的に異なっているためです。
トークン化へのCardanoのアプローチは、ブロックチェーンにおけるカスタム資産の表現をスマートコントラクトなしに可能にするものです。そして、こうした資産を、以下を除いて主通貨であるADAと同様に動かすことです。
- ADAとは違い、ネイティブトークンは作成および破棄できる
- サービス手数料、報酬、デポジットに使用できるのはADAのみ
ネイティブトークン用語
「コイン」、「トークン」は暗号界で頻繁に使用される用語です。これらは置き換え可能な場合もあれば、そうでない場合もあります。そして時には、「トークン」はすべてのデジタル資産を網羅する、ある種の包括的用語として用いられる場合もあります。
ここで、より細かい点を指摘しておきましょう。Cardanoのトークン化へのアプローチは台帳自体と同様にユニークです。したがって、ネイティブトークンのフレームワークを理解するのに役立つ用語を一部紹介します。
GoguenやCardanoにおいて
- トークンとは、Cardanoブロックチェーンに保存された資産の表現と定義される
- 資産とは、定量化できるすべてのもの
- トークンバンドルとは、複数のトークンの表現
- ネイティブとは、スマートコントラクトを使用せず、Cardano台帳で実行するトークンロジックを指す
Cardanoのネイティブトークン
イーサリアムは、ユーザー定義のトークンをチェーンでサポートするためにカスタムコードを必要とします。つまり、両標準のトークンコードはシステム自体の一部になるのではなく、複製、適用されるため、複雑性やコスト(コードの実行に支払われるガス)、非効率性が増すことになります。これは人的エラーの余地を残すこととなるため、イーサリアムチェーンが抱える弱点となります。カスタムコードは、きちんと行われないと、甚大な金融的損失を招く恐れのあるバグを引き起こしかねません。ソフトウェアのバグが3億米ドル相当のehter損失につながった有名なケースもあります。Cardanoのアプローチはこのような悲惨なエラーを防ぐことを目的にしています。
Cardanoはユーザー定義のトークンをネイティブとしてサポートします。これは、カスタムコードを必要とせずに、ネイティブトークンのフレームワークを通じて行われます。ネイティブトークンは暗号通貨台帳の一部として定義される会計システムで、トークンのトランザクション(追跡および送受信)を可能にします。これでカスタムコードやコストのかかるスマートコントラクトを使用する必要はなくなります。つまり、ネイティブトークンは必要のない高価な複雑性の層と、イーサリアムチェーン固有の非効率性を排除しています。
Cardanoにネイティブ資産が必要な理由
Cardanoは分散型台帳です。通常、分散型台帳を設計する場合、単一の資産タイプ(例えば独自の暗号資産など)のみの追跡を可能とします。しかし、台帳が分散化という意味において進化するにつれ、複数タイプの資産を同じインフラストラクチャーを使用して追跡する必要性および可能性が明らかとなっています。そのため多くのブロックチェーンはステーブルコインやユーティリティトークン、クレデンシャルトークン、セキュリティトークンといった複数資産をサポートすることができるのです。
ネイティブトークン機能は台帳モデル(ADAのトランザクションのみを処理するように設計された)で定義された会計インフラを拡張し、さまざまなタイプの資産を同時に使用したトランザクションを可能にします。
Cardanoのネイティブトークンは、セキュリティや手頃な価格という点でERC-20やERC-721トークンよりも優れています。次回第2回目ではこの詳細と、今後数か月にわたり開発者がどのように関わることができるかについての概要を説明します。