IOHKブログ:ネイティブトークンがCardanoに新たなユーティリティをもたらす

まもなくユーザーがCardanoで取引きする独自のオンチェーントークンを作成することが可能に

2021年2月4日 Tim Harrison 読了時間5分

Native tokens to bring new utility to life on Cardano

メアリー・シェリーの肖像 Richard Rothwell(1800~1868)

Goguen(ゴーグエン)ロールアウトは継続中であり、分散型のマルチ資産(MA)プラットフォームへとCardanoを進化させるための重要な要素がまた加わりました。Goguen Mary(メアリー:作家メアリー・シェリーに由来)への更新では、ユーザー定義のトークンを作成する機能が導入されます。これらのカスタムトークンは「ネイティブ」であり、まさにADAのように、直接ブロックチェーン上で取引きすることができます。ADAがCardanoの主通貨であるのはそのままに、Cardanoはマルチ資産(MA)ブロックチェーンへと変容し、その可能性をさまざまに広げます。このMA機能は新たに開発された、世界各地の開発者の中心軸となり、Cardanoのリーチと可能性をさらに広げます。

もう一つのハードフォーク

昨日、実質的にはハードフォークを用いて、無事MaryをCardanoパブリックテストネットへと配信しました。ここではメインネットへの配信に先立ち、最終テストを行います。このフォークはプロセスの中でも重要なステップです。テストネットはできる限りメインネットへ近づけた環境だからです。すべての要素をテストネットに配信したら、開発者たちを招いて結果をモニタリングすることで、メインネットでどのように動作するか正確に解明することができます。

ハードフォークは混乱を招きやすいイベントです。これはフォーク前のブロックチェーンの履歴が参照不可能となるためです。慎重な計画、テスト、実行を欠くと、意図しない結果をもたらしかねません。例えば、プロトコルのルールが変更されると、それ以前のブロックは失われる場合があります。

しかしながら、Cardanoではハードフォークイベントの扱い方が異なります。ハードフォークコンビネーターを使用することにより、サービスの中断やネットワークの再起動を引き起こすことなくプロトコルをつなぎ合わせます。そして重要なことに、コンビネーターは以前のブロックの履歴を維持します。

Cardanoは数回に及ぶ開発段階を経てきていますが、ゴールはまだまだ先です。Goguenは今起こっています。Project Catalyst(プロジェクトカタリスト)でVoltaire(ボルテール)の萌芽が見られ、Basho(バショウ)もこれに続きます。各段階がCardanoの旅を最終目的地である真の分散化とスケーラビリティ、ユーティリティ、そしてサステナブルなガバナンスへと近づけます。そして各段階で十分に試行を重ねた技術であるコンビネーターを使用し、移行を推進します。コンビネーターを最初に試用したのはByronからShelleyへのアップグレード時で、シームレスな移行の達成においてその効果が実証されました。12月にトークンロックをもたらしたAllegra(アレグラ)でも、次のCardano開発ステージであるAlonzo(アロンゾ)でもコンビネーターは使用されます。

Maryへ至る方法

Allegraによるトークンロックの到来は、Ouroboros(ウロボロス)プロトコルにとって比較的小規模な技術的変更ではありましたが、Cardanoのマルチ資産(MA)戦略、そしてネットワーク全体の将来にとっての閾値を確立しました。この変更により、スマートコントラクト用のプラットフォームと、ADA以外のネイティブ資産のサポートの準備が整えられました。

Allegraがリリース可能なコードを導入してMaryの素地を整えたことで、エンジニアはテストを開始することが可能となりました。この作業は、金銭的なスクリプトの定義、マイニング、トークンの還元と廃止、トランザクションにおけるトークンの送信といった機能をカバーしています。

年末休暇の直前に、ウォレットバックエンドにプログラミングインターフェイス(コマンドラインインターフェイス:CLI)が追加されました。以来、マルチ資産ブロックのサポートの検討と合わせて、このウォレットバックエンドとインターフェイスの更新が進められています。

現在メタデータレジストリーを備えた完全なウォレットバックエンドの統合が仕上げ段階を迎えており、Rosetta API(Cardanoブロックチェーンとやり取りするため取引所で一般的に使用されているインターフェイス)はマルチ資産をサポートできるよう更新されます。

メタデータレジストリー

ここで、メタデータのコンセプトについて説明しておきましょう。Cradanoでは、メタデータは人間が読むことのできるネイティブ資産の説明です。これらの資産は人には読めない識別子を使用してオンチェーンに保存されます。この情報の可読バージョンはオフチェーンのパブリックトークンレジストリーに保存されます。これらのレジストリーは、当面IOGが管理しますが、最終的にはコミュニティが管理し、設定できるようになります。したがって、この点からもCardano分散化という目標に向けて前進することになります。コミュニティにこれらのレジストリーを所有、設定する権限を与えることにより、コミュニティが完全にデータセットを信用できることを保証します。なぜならユーザー自身がデータ所有者であり、正直に行動することが彼らにとって最善となるためです。

Maryはもうすぐそこに

Maryコードベースは2月末までにメインネットへ配信される予定です。ここでは、すべての最終テストが2月中に計画通りに進むことが想定されています。Maryの配信は、これらの新たな機能からコミュニティが利益を得られるようにする一連の革新段階の第1弾です。

  • 昨日は、Goguen MaryコードをCardanoテストネットに無事配信しました。SPOコミュニティと社内チームは現在最終的なUATを行っています。
  • Cardanoエクスプローラー(ブロックチェーンとトランザクション情報をCardanoネットワークから取得して表示するツール)も更新され、昨日品質保証テスト用にリリースされました。
  • Daedalusウォレットの基本バージョンを、ウォレットバックエンドのテスト用に配信しました。
  • 2月中に、Daedalusウォレットを複数トークンの送受信および表示をサポートするよう更新します。ここには新しいバックエンドインターフェイスとの統合も含まれます。
  • メタデータレジストリー(ユーザーが送信するメタデータを保存するGitHubリポジトリ)は今月後半にオンラインに登場します。
  • テストネット段階以降、テクニカルサポートデスク(TSD)によるサポート、トークンを表示および取引きするための専用テストネットウォレット、およびトークンにメタデータを追加するレジストリーの利用が提供されます。また、コミュニティチームが参加を望む開発者をサポートするために運営する専用の開発サポートプログラムも用意されています。

Goguen Maryの配信は、Cardanoの旅にとって重要な段階です。Maryがネットワークで暗号のカギを回すことにより、私たちはユーザーが無数のアプリケーション、すなわち分散型金融(DeFi)や数えきれないほどのビジネスユースケース用に自分自身のトークンを作成するメカニズムを解錠します。

来週はネイティブトークンのコア機能とユーザーが期待できることについて、少し掘り下げたブログ記事を投稿します。Twitterをフォローし、YouTube公式チャネルを登録して、Goguenロールアウトの最新情報をお見逃しなく。