IOHKブログ:Shelleyインセンティブ付きテストネットのインセンティブモデルとは

Cardanoのインセンティブモデル、報酬、そしてインセンティブ付きテストネットのプランを紹介します

2019年12月5日 Kevin Hammond 読了時間7分

最近インセンティブについて語る機会が増えています。それというのも私たちは現在インセンティブ付きテストネット、すなわちステークホルダーに自分のステークを委任するかステークプールを運営することでADAによる実際の報酬を得る機会を提供するShelleyテストネットを実行しているからです。今月末には、残高スナップショット(11月29日実施)の時点でDaedalusまたはYoroiメインネットにADAを保有していた人は誰もが、委任する側あるいはステークプールオペレーターとしてインセンティブ付きテストネットに参加できるようになります。

インセンティブ付きテストネットの主要目的の1つは、Ouroborosインセンティブホワイトペーパー(英語のみ)で設定した仮定を実世界の環境で試すことです。これはゲーム理論を基に、ブロックチェーンネットワークへの一貫したアクティブで強力な参加を確保するために必要なインセンティブを計算したものです。

Cardanoの基盤は数学です。しかしその中心的柱はこれまでになく公正で、透明性の高い、公平なシステム、世界的に分散化されたシステムの構築を目的とした哲学です。

インセンティブの重要性

システムがうまく機能するかはインセンティブの適正な供給にかかっています。会社を考えてみてください。社員に働いてもらうためには企業が十分なインセンティブを供給することが必要です。これは単に出社を促す、すなわちシステム内に存在する、という意味に止まりません。特定の機能を期待する基準で果たすことまでが求められるのです。分散化システムにも同様のことが言えます(むしろ、ほぼ間違いなくその重要性は増します)。Cardanoは世界的な参加者による分散型ネットワークです。各参加者に自己の利益がネットワークの利益につながることを理解させながら、その参加を促し、役割を果たしてもらうためには十分なインセンティブが必要となります。

インセンティブメカニズムの概要

Cardanoのインセンティブモデルは合理性の前提から始まります。すなわち各プレーヤーは自分のリターンを最大化するために行動する、というものです。このリターンがシステムのインセンティブであり、金銭といった具体的な報酬、または高い評価や評判、地位、アイデンティティ、充実感といった目に見えない報酬のいずれの形をとることもできます。

無私無欲の行動というものは稀です。個人として、私たちは直接的間接的に報酬が得られるような戦略を追求します。ところが私欲から行動する参加者のネットワークは混沌を招きます。だからこそ、うまくいくシステムは、プロトコルや規則、法により、各参加者がいつどのように報酬を得るかを体系化しているのです。ゲーム理論の中核をなすものに、理想的なシステムは自己の最大の利益のために行動する利己的な参加者が、同時にシステムの最大の利益のために行動するように意図的に仕組まれているものである、という原理があります。

これがOuroborosのインセンティブメカニズムの機能です。いつどのように報酬が支払われるか、およびステークの寄与レベルに応じた報酬の比率を特定する一連の設定です。これにより、分散化された参加者のネットワークが分散型システムの中で連携し協働することができ、私益に従って報酬を受けながらも、長期的に健全なネットワークを保つことに貢献することになるのです。

Cardanoインセンティブモデルの目的

これからどのようなシステムにとっても公平性と公正性がサステナビリティの鍵となります。これは、個人の目的や自己の利益とは別に、システムそのものによってのみ達成可能です。個人は、ネットワークの運用を妨げることない、または他者の可能性を制限することのない限り(例えば不均衡な支配力を持つなど)、自由に自身の創造力を発揮して、結果を最大化することができるべきです。1人の参加者のみが毎回勝者となれば、他の参加者はインセンティブが得られず、最終的には権利がはく奪されることになるでしょう。Cardanoインセンティブメカニズムの最終的な実装では、インセンティブに関するホワイトペーパー(英語のみ)に概説されている通り、最大が常に勝利するわけではなく、富める者のみがより富むわけではないことを保証しながら、こうしたファクターが統合されます。

これが、インセンティブモデル - 個人と集団の利益を開拓し連携させるための閾値とパラメーターをテストすること - を支えるゲーム理論の目的の一つであり、同様にインセンティブ付きテストネットの目的の一つでもあるのです。今後段階的に、新たなファクターを報酬の計算に導入し、参加者の行動への影響をモニタリングする予定です。

インセンティブモデルのテスト

インセンティブ付きテストネットで導入されるインセンティブモデルは最終モデルではありません。この段階を活用して、私たちはインセンティブモデルを徐々に試し、仮定を検証し、ネットワークや参加者が想定したとおりに反応するかを調査していきます。

しかしながら、ここではゲーム理論だけをテストするわけではありません。技術面のテストも行っています。報酬計算機の追加機能は、基本モデルが安全で堅固であることが証明されてから導入していきます。

当初は報酬計算機にさまざまなファクターは搭載しません。これには、ステークプールの数を増加させるファクターや、望ましさによりステークプールのランクを上昇させるファクターなどが含まれます。その他のファクターは、限界を設けながら追加していき、機能や計算能力も長期にわたり進化させます。これにはステークプールのランク付けも含まれます。当面、ランク付けはステークプールのパフォーマンスを基本としますが、インセンティブ付きテストネットが進むにつれて、望ましさ(コスト、マージン、出資ステーク、パフォーマンスの組み合わせ)に基づいたものに移行していきます。

それから徐々に報酬計算機にファクターを追加していきます。ステークプール数の増加を促進するファクターやシステムが最も望ましいステークプールを保証するファクターなどです。これら一つ一つが重要で、それを段階的に導入することで想定したとおりに機能することが保証され、各ファクターでネットワークに意図したとおりの効果を出すことができます。

インセンティブ付きテストネットの報酬

インセンティブ付きテストネットでステークの委任またはステークプールの運営により得られる報酬は、ネットワーク参加率次第となります。エポックにつきおよそ380万ADAが報酬として付与されます。ネットワーク参加率が50%の場合、委任による年間リターンはおよそ7~8%と見積もられます。しかし、ネットワーク参加率がこれより低ければ、13~15%の高さも期待できます。こうした数値は税金、ステークプール手数料により変動します。報酬計算機はインセンティブ付きテストネットサイト上で使用可能です。これを使用することで、他の不確定要素に加えて、異なるネットワーク参加率に応じた報酬額を概算することができます。ここで少しだけお見せしましょう。

参加率30%における報酬の概算

参加率50%における報酬の概算

今後の配信予定

これはテストネットです。ネットワーク参加者にその貢献度に応じて正確かつ公正に報酬を付与し、単独のアクターがネットワークに対し不均衡な支配力を得ることを防ぐという、Ouroborosのホワイトペーパーで説明されている通りの望ましい結果を得るためには、必然的に反復プロセスを余儀なくされます。私たちはテストネットを通じて参加者たちの行動を積極的にモニタリングし、報酬計算機にいつ、どのようなファクターを追加するかを見極めていきます。

インセンティブ付きテストネットについての詳細情報は、専用サイトをご覧ください。ステークプールの運営に関心がある方は、関心事項を登録し、テストネットサイトでステップごとの説明をご覧ください。そして通常通り、Twitterをフォローするかメーリングリストに登録して最新の進捗情報をお見逃しなく。

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