IOHKブログ:モンゴル - AtalaとCardanoのパイロットに打ってつけの場所

モンゴル - AtalaとCardanoのパイロットに打ってつけの場所

政界も財界もブロックチェーンに夢中

2019年5月16日 チャールズ・ホスキンソン 読了時間6分

モンゴルと聞いて真っ先にイメージするのはおそらく一面の草原、山々、凍えるような冬、そして遊牧民といったところだろう。最先端のテクノロジーとはあまり結び付かないかもしれないが、実はブロックチェーンの試行に最適な国なのだ。

首都のウランバートルの人口は1990年以降ほぼ3倍にまで増加し、現在総人口300万人の約半数にまで達している。この成長は様々な問題を生じさせた。世界保健機関(WHO)の基準に照らして世界最悪レベルとなる大気汚染もその一つだ。

冬は気温が摂氏-40度にまで下がり、大多数の人々が木枠とキャンバス地で建てられたゲルと呼ばれる円形の家屋で火を焚いて過ごす。ここで燃やされるのは主に原炭であり、場合によっては動物の糞から車のタイヤまで、暖を取るために手当たり次第に燃料とされる。

私はちょうどウランバートルから戻ってきたところだ。現地では大気質を査定するために、モノのインターネットプロジェクトの可能性について調査を進めている。アイデアとしては、センサーを各所に設置し、IOHKのAtala(アタラ)エンタープライズブロックチェーンを使用して計測するというものだ。一旦ネットワークが敷かれれば、不正のない、タイムスタンプ付きのデータが生成されるため、当局は汚染生成地域を特定し、重度の汚染地域を集中的に浄化できるようになる。数千ものセンサーを設置するのはコストがかかるが、集計データが届くごとにCardanoを使って支払いがなさるようにすれば、人々は喜んで参加し、継続して作業を進めるだろう。


チャールズ・ホスキンソンがモンゴルに招集した、EmurgoのManmeet Singh情報部長、IOHKのLars Brünjes教育ディレクターをはじめとするチーム

ウランバートルでは、急成長を遂げている国に共通するこうした諸問題の解決策について、閣僚と話し合いがもたれた。別の例を挙げれば、地方では医薬品の40%が偽造品または不良品、もしくは有効期限切れであり、都市部ですらその割合は18%に上る。私たちはAtalaを使用した追跡可能プロジェクトでこの問題に対処したいと考えている。医薬品サプライチェーンに説明責任と透明性を導入すれば、偽造医薬品の危険から人々を守る一助となり、生命を救うことにもつながる。

またモンゴルでは、ほぼ全員が携帯電話ネットワークにアクセスしている。一方、人口の30%が何らかの形で政府から支払いを受けているが、これにかかる経費は甚大である。ブロックチェーン技術を使ってこの二つの要素をリンクさせることで、政府は大幅な財政削減ができ、受益者はたとえモンゴルの山村にいたとしても、受け取りがずいぶん楽になる。

その他にもAtalaとCardanoを活かせる分野はいろいろあるが、特にまったく異なる2つの分野について触れておきたい。カシミア産業と大学の学位認定である。モンゴルでは、実に世界の半数のカシミアが生産されている。東京やパリのブティックではとても高い値段で売られているカシミアだが、モンゴルの山羊は中国にとても安く売られる。ロジスティクスの向上と調達ルートの明確化により、これを改善できる可能性がある。大学に関しては、現在モンゴルには65校の大学があり、そのほとんどがウランバートルに位置している。そこで、学位取得証明をブロックチェーンに保存して、誰もが簡単に資格を証明できるようにしたいと考えている。

投資の促進という点に目を向ければ、アジア開発銀行は数億ドルにも上る資金を様々なプロジェクトにつぎ込んでいるが、監査証跡は万全とは言い難い。私たちはこの点にも対応できる。


ウランバートルで開催されたFrontier Fintechサミットで演説するモンゴルのTsogtbaatar Damdin外相

実際複雑な状況ではあるが、ブロックチェーンが解決案の一つとなる。Atalaで処理、集計したデータをCardanoにフィードし、ADAによる支払処理を行う。こうすれば、Cardanoブロックチェーンに膨大なデータが保存されることはない。

モンゴルではFrontier Fintechサミットに出席した。この場において私たちは、Mongolian Blockchain Technology and Cryptocurrency Association(モンゴルブロックチェーン技術および暗号通貨協会)およびMongolian Fintech Association(モンゴルフィンテック協会)と、潜在的ブロックチェーンプロジェクトおよびブロックチェーン教育の発展に対する助言を行うべく覚書を締結したことを報告した。しかし、これはまだ始まったばかりだ。関係を構築し、適切なパートナーを見極め、技術とインフラを整えるには時間がかかるため、私たちには忍耐が要求される。こうしたプロジェクトは大概3年から7年ほどかかるものだ。このミッションにおいて、教育が中心に据えられているのはそのためだ。基盤を固めるために現地で訓練を施す。これを私たちはエチオピアで実施したHaskellコースで既に実行している。

しかし、こうした差し迫った問題に対し解決策を提示する試みは、始まったばかりだ。たったひとつでも解決策を実施できたとしたら、それは何百万ものユーザーに暗号通貨エコシステムへの門を開くことになる。Cardanoの世界を広げることにより、先進国で当たり前とされている保険、銀行振り込みといった金融ツールをこうした人々に提供できる。そしてひいては、ブロックチェーン界全体にビジネスが生み出されるのだ。

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