IOHKブログ:これからの12日間に向けて

英語の伝統的な数え歌になぞらえた過去、現在、未来

2020年4月24日 Anthony Quinn 読了時間6分

「興味深い時代を生きられますように」とは、この激動の日々にふさわしい言葉でしょう。この数年の話題は、ディスラプションテクノロジーでしたが、その後訪れたコロナウイルスにより、人類は「ディスラプション(破壊的)」の真の意味を悟りました。そして転換点となった2020年。これからの世界はこれまでと同じではありえません。でもここでは年末にあたり、未来に目を向けて、何か明るい兆し、新たな地平というものを眺めてみたいと思います。

そこで、古い英語の数え歌「クリスマスの12日間」になぞらえて、12人のメンバーに今年印象に残ったこと、現在行っていること、そして来年楽しみにしていることを尋ねてみました。全員が仕事熱心ですからCardanoの話題が豊富でしょうが、彼らはまた休暇を楽しむのも大好きなのです。不思議なことに、12日間の歌とは異なり、誰も「梨の木にいるヤマウズラ」や「5個の金の指輪」、「10人の飛び跳ねている貴族」については語ってはくれませんでした(訳注:いずれも歌詞に登場するフレーズ)。代わりにタコやセキュリティのヒント、そして古典的な詩が登場します。

このアイデアが、これからの人生でいいことが起こることを楽しみにするきっかけになればと思います。

ただ、このクリスマス休暇の12日間、我らがコンテンツチームやウェブチームを毎日ベッドからたたき起こすには忍びないので、12月25日から1月5日までをカバーするよう、いくつかの塊に分けて投稿します。これが最初の4人です。

1日目:Duncan Coutts テクニカルアーキテクト

Shelleyを公開し、有言実行できたことが何よりでした。私たちは保証性に優れたソフトウェアエンジニアリングを使い、ブロックチェーン界で他とは根本的に異なるアプローチを採りました。うまくいかなかったら、という思いはどこかにありましたから、実際に機能する様子を見てとても満足しました。Shelleyハードフォーク以来、コンセンサスコードに生じたバグは1つだけで、それもテストの段階でわかっていましたし、対応策も立てていました。この結果により、形式手法、Haskellテストアプローチが正しいことが証明されました。

2回のスムーズなハードフォークで示されたのは、台帳ルールに変更を加えることができること、そして台帳ルールのみを変更できることです。その他の部分に変化は見られませんでした。Byronコードのリライトで採用したモジュラーアプローチによって、修正は、以前とは異なりシステム全体の変更を意味するものではなくなりました。

現在進行中のネイティブ資産のサポートは極めて重要です。これにより、ERC-20のほとんどの機能やその他の機能が使用可能となります。今後については、Plutusの追加により、Cardanoにスマートコントラクトが到来することで、来年はその変化が浮き彫りになるでしょう。

2日目:Simon Thompson シニアリサーチフェロー

私は、このWired マガジンのFacebookページの動画を何度も見返しています。これは私だけではありません。300万人の人々がこのページを気に入っています。これは本当に夢見るタコなのでしょうか。

現在、私は2021年初頭に行う作業の計画を立てています。MarloweをCardanoに実装し、これを使用可能にするためのユーザー向けコンポーネントを構築するのです。

そのあとは、Marloweの公開が待ち遠しいです。第三世代ブロックチェーンで金融コントラクトを実行する機会がすべての人に開かれます。それまでの間は、のんびりとタコを眺めるとしましょう。これは本当にクールですよ!

3日目:Dynal Patel シニアプロダクトマネージャー

Cardanoがいつか毎秒100万トランザクションを処理できるようになると予想したこのブログ記事を見てください。これはブロックチェーンのコンテクストにおいてはものすごい数字です。VisaやMastercardといった世界的な支払いシステムを遥かに凌いでいます。クレジットカードは1950年代から存在しており、nCipherがVisaとBritish TelecomのArmチップに暗号化を実装して、今日私たちがよく知っているオンラインコマースを推進したのは1997年のことです。もちろん、私たちはまだ毎秒100万トランザクションの数値からは程遠いですが、マイクロトランザクション用のCardanoの技術を分散型IDプラットフォームであるAtala Prismと組み合わせることにより、大量のアプリケーションが生み出されるでしょう。この中には、モノのインターネット用の安全なデバイス、スマートシティ用のデータ、およびユーザーが自分のデータを所有、コントロール、および収益化できるようにするソーシャル共有ネットワークが含まれます。例えばモンゴルでは、汚染を監視する方法を検討しています。ここで、そのようなデータを必要とするサービスプロバイダーは、データを収集するためのセンサーを実行するために地元の人々に支払うことができます。

今、私はDon Tapscott、Alex Tapscott共著のBlockchain Revolutionを読んでいます。ここでは、金融セクターでディスラプションの機が熟した8つのコア機能について説明されています。最初の機能は「アイデンティティと価値の認証」で、これは、AtalaPrismが目指していることです。

最初のクライアントにAtalaをデプロイする日を楽しみにしています。Prismを使用すると、ピアは検証可能で、堅牢で、暗号的に安全なIDを確立できます。また、各実装が、Cardanoエコシステムに100万人のユーザーをもたらす可能性があることが期待されます。個人的な話ですが、私は最近、子供向けの慈善団体であるBringing Smilesの議長になりました。2021年には、世界中から厳選した、子供たちの慈善団体を支援するための資金を調達することにより、活動を拡大することを目指しています。

4日目:Aikaterini-Panagiota Stouka リサーチャー

2020年は、「ステークプールの報酬共有スキーム」というエキサイティングなニュースから始まりました。これは、IOHKの教育ディレクターであるLarsBrünjes、エジンバラ大学のAggelos Kiayias教授、IOHKのチーフサイエンティスト兼オクスフォード大学教授であるElias Koutsoupias教授との共同研究で、セキュリティとプライバシーに関するIEEE欧州シンポジウム用に認められました。これは、トップレベルの査読付きサイバーセキュリティ会議であり、実際のシステムの構築に重点を置いています。これこそ、わたしたちがCardanoを使って支援していることです。コロナウイルスのおかげで、このイベントはオンライン開催となりました。この論文では、Cardanoのインセンティブの基礎となるスキームを紹介しており、2018年からプレプリントがarXivで利用可能になっています。何年にもわたる研究、深夜にまで及ぶ作業、そして分散化に最適な報酬メカニズムを発見しようと理論と実験の間を何度も行き来した後に、私たちの仕事が受け入れられたのを見るのは素晴らしい気分でした。

現在、私はエディンバラ大学に提出した博士論文の審査を待っています。また、同じチームで報酬メカニズムへの取り組みを続けています。現在調査中の問題は、競合他社になる可能性が高い場合でも、プールの作成を希望する他人が発行した登録証明書を、プールオペレーターがブロックに含むよう奨励することです。

博士課程の修了は実に待ち遠しいです。また、共著者や他のIOHKメンバーとの共同作業を続け、さまざまな共同プロジェクトの報酬共有メカニズムの研究を進めていこうと計画しています。Kiayias教授による関連ブログ記事は報酬メカニズムを分類し、この研究について解説しています。Cardanoに関しては、kパラメーターの増加を観察しています。これは想定するプール数に関連するもので、理想的なシナリオとしてはナッシュ均衡と呼ばれる状態で安定します。この増加はより多くのプールに競争力をつける機会を与え、分散化を強化します。

次回「12日間に向けて」は12月29日配信予定です。